第二部  動物としての人間

    食物

 

 地球上のあらゆる動物は、それぞれの動物が地球上の彼らに合った何らかのものを食物として生存しています。例えば、蝶は花の蜜を、稚魚はプランクトンを、牛は雑草、豹は動物の肉をという様にそれぞれの動物はそれぞれのものを食物としています。人は植物、魚類、肉類を初め鉱物までも食物としています。おそらく動物の中でこれほど多くの種類のものを食物としているのは人間以外にないでありましょう。

 とは言うものの人として、活動のエネルギーとなる主なる要素は蛋白質、脂肪、炭水化物の三つの物であります。もちろん人間の体は組織体として成り立っているので、水分・ビタミン・灰分・カルシュウム・リン・鉄などなどが調和の取れていることが前提であります。

 現在ではまだまだ有機質の合成が不可能である段階では、どうしても人間の主なる成分(蛋白質、脂肪、炭水化物)は自然の生産に頼る以外にありません。このことは人間だけに言えることだけではなく、あらゆる動物についても同様であります。しかもほとんどの動物は一種類か二種類のものしか食物としない、たとえば、蝶の中のツマグロキチョウはマメ科のカワラケツメイを食物としています。つまり多くの動物は数少ない食物がなくなることで生存が不可能になって行くのであります。人間よりもはるかに滅亡しやすいのであります。ある種の草木がなくなればある種の幼虫が少なくなり、ある種の幼虫が少なくなればある種の鳥が少なくなりというように簡単に自然の調和は崩れてしまうのであります。

 最近公害の問題が世界各国で問題になっていますが、この公害でも特にひどい日本では、動物の世界に多くの例を見ることができます。

 つまりある特定の食物しか食べない動物たちだから、原因・結果を凝縮したかたちで、われわれに見せてくれます。東京湾の畸形ハゼ、養殖ハマチの畸形、手無し猿集団、飛べない野鳥など数限りない姿を我々に見せています。

 けれども人間はこれら自然界の動植物を食べる以外に生きる道はありません。